経験のない手続をするにも行政書士と一般の方だと違いが出ます。
例えば、若い人って初めて見る新しいサービスとかアプリとかでも使い方の理解が早いですよね(たぶん)
ああいう感じで、行政書士は経験からやったことない手続でも、難しそうかどうかとか、なんとなくこうやればできるかな?ってのが分かるってことが多いです。
どこの情報を見ればいいのか(農水省とか)、どこに聞けばいいのか(担当部署)、必要書類の把握(どこでどうやってとるか)、何に気をつけないといけないかとかを理解・判断するのが早いと思われます。
また、他の行政書士や他士業などと繋がっていればネットでは分からない情報(似た事例はどうだったとかローカルルールとか担当者の性格とか)を仕入れることができるという面があります。
情報をたくさん集めても、どれが必要な情報か、正しい情報かの判断もしないといけません。中には不十分なものや間違ってるのがあるかも。
実際に実験した行政書士がいた
行政書士と一般の方の手続のやり方の違いについて面白い実験して論文出してる行政書士がいます。
川口弘行
日本社会情報学会全国大会研究発表論文集
PC画面だと右上の赤い「PDFからダウンロード」から見れます。
架空の「器物管理業届出申請」っていう手続を作って、行政書士開業支援メルマガで募集広告に応じた行政書士業務経験者6人、行政書士業務未経験者6人の計12人の参加者にやってもらうという実験です。
参加者は全員行政書士開業支援のメルマガ見てるような人なんで、未経験者も行政書士試験合格者とかでしょうか?
法人から依頼を受けたという設定で、届出書は2枚だけで内容は難しくなく、添付書類も少なくて、営業所の図面とか器具の写真とかのめんどくさいのはないんでわりと簡単な方の手続だと思います。
結果
【課題成功】
行政書士業務経験者 5人
未経験者 1人
【失敗(不備あり?)】
行政書士業務経験者 1人
未経験者 4人
【未了】
未経験者 2人
経験者が1人失敗してるのがリアルです。
実験後に参加者にアンケートをとったところ、面倒だと感じた作業は、
「法令を読み理解する」「申請に必要な要件を整理する」
成功者 8%
失敗者・未了者 50%
「準備書類を請求する」「依頼者とのやり取り」
成功者 67%
失敗者・未了者は内容の把握の段階、成功者は次の段階で面倒だと感じた結果となってます。
内容把握の段階で面倒だと思ったのであれば、次の段階ももちろん面倒です。
簡単な書類なら自分で手続した方がいい?
書類作成はそんなに難しくない手続も多くあります。
行政書士業務で書類作成が簡単と言われる手続として、車庫証明や車検証の所有者の住所変更などの車関係の手続があります。
一般の方でも書類作成はできますが、いつでもパパっと手続できるかというと・・・
軽自動車の車検証の手続きなどをする軽自動車協会も混雑時はこうなってます。
基本的には行政窓口に行ってみないと提出までどれくらい時間がかかるのか分からないので、必要時間の予測が難しいです。
受付時間ギリギリに行ってしまうと「また明日来てください」となったり、不備があって出直しとなることも考えられます。その行政窓口が遠いと時間の確保だけで大変かもしれないですね。
書類作成が比較的簡単な車関係手続でも行政書士業務として成り立っているのは、移動時間や待ち時間などを削減できるメリットがあるからです。
行政手続きは
書類作成
↓
提出
↓
不備の対応等
↓
許認可証などの受取
までやって手続完了です。
書類が簡単=手続が簡単
とは言えません。
書類を持っていく・取りに行く時間、担当者との日時調整、不備指摘に対応する時間も「手続」です。
また、一番大事なのは書類作成前の調査です。
要件をクリアできてないのを知らずに書類作成しても無駄になってしまいます。
前半の実験にあったように、まずは手続内容の把握をしっかりしましょう。
あと、車関係手続を例に出して簡単簡単言ってますが、あんま経験がない業務なので実際に行政書士として依頼を受けるのはめっちゃ怖いです。簡単だと思いこんで危なかった経験があります。
ディーラーなどからの急ぎの案件も多いので、ミスのリカバリーが難しい手続だと思います。
それぞれのメリット
自分でやるメリット
- 行政書士へ支払う報酬はかからない。
- 勉強になる。
- 自分のペースでできる。
行政書士に相談・依頼するメリット
- 書類収集や作成だけじゃなく、調査・行政との調整・不備対応・書類提出・受取などの時間の節約になる。
- ついでにいろいろ教えてもらえるかも。
- 行政に直接聞きにくいことが聞ける。
- 今後もなんかあったとき相談しやすい。必要なら他士業などにも繋いでもらえるかも。
メリット・デメリットを分かった上で判断を
通常はネットで調べたらだいたい必要書類ややり方が分かるはずなので、自分でできるなら自分でやった方がいいに決まってます。
- 要件クリアの判断や手続内容の理解
- 行政担当者や関係部署、関係者との対話力・調整力
- 不備指摘の嵐にくじけぬ心
- 何かあっても対応できる時間的・精神的余裕
があるなら自ら手続を行いましょう。
前半の実験で失敗になった人も時間に余裕があれば不備対応をして手続完了できたかもしれません。
要件や必要書類を理解しないまま進めるとあとで取り返しつかなくなることもあるので、くれぐれも見切り発車はしないようにおねしゃす。
行政職員からも慣れない一般の方だとかなり不備が多いと聞きます。不備が出ること前提で動きましょう。
経験のある行政書士なら、事前に要件や添付書類や他に手続がいるのかなどをしっかり調査した上で進めますし、不備の対応も素早くできます。不備対応に慣れてるから。