自治体のホームページや説明資料にも「審議の過程で除外不適当とされる案件が多数あります」というような文言が踊る珍しい手続です。
農地に適している地域をむやみに開発させないように、農業振興地域が定められています。
その名の通り、農業を振興しましょー!って地域で、開発が進んでいるところ以外は農業振興地域になっているところが多いです。
農業振興地域の中に区分があり、担当部署に問合せると「白地」とか「青地」って回答されます。
農振農用地(青地)を農業以外で利用したい場合、俗に農振除外といわれる手続が必要になります。
農振除外というのは正式な名称ではなく、手続書類は「農用地利用計画変更申出」とか「農用地区域変更願い」となってます(統一してくれ)
畑・田でも農振農用地にあったり、白地区域にあったりしますね。
こういう図を見たら分かりやすいんですが、普通は「白地」とか「青地」って言われても分からないんだから農振除外手続がいるのかいらんのかで答えたらいいのにというか、農振農用地(青字)だけでいいじゃんと思ってました。
行政担当者になんで白地と青地の区分があるのか質問したところ、県が農業振興地域(白地)を決めて、その中に市町村が農用地区域(青地)を定めるからとのことでした。納得。
イメージ図でも分かるように、農振農用地は、良い農地を1筆1筆選んで指定しているわけではありません。
農業に適してる地域を、この辺いい感じだから農振農用地にしますドーン!とやってるので、基本的にその地域は農地だろうが山林だろうが原野だろうが関係なく農振農用地になります。
図でも左上の森林・原野が農振農用地に入ってますね。
到底、農業に使えないような傾斜地で農振農用地になってるところも多くあるのは、農振農用地にしておくと開発行為を抑制できて土砂災害防止になるからという理由もあるようです。
×農振農用地=農地
○農振農用地=地目・現況関係ない
農振農用地って名称なので農地限定っぽいですが、だまされないようにしましょう。
南城市は半分くらい農振農用地になってます。
超絶紛らわしいんですが、この2つは別々の法律で、手続が違うし担当部署も違います。
そして必ずセットになるわけではありません。
農地法は農地についての法律です。
でも農振法は上で説明した通り、農地かどうかは関係ありません。
なので、農地法の手続が必要でも農振除外手続は不要なこともありますし、逆に農地法の手続が不要でも農振除外手続が必要ということもあります。
とにかく農地法と農振法はめっちゃ関連するけど別だと思ってください。
農振農用地内の農地転用する場合は、農振除外→農地転用と別々に手続を行うことになります。
農振農用地内の農地 |
土地取引の際の農地法手続 必要 |
農業用途以外の利用 ダメ |
農振農用地内の農地以外(原野、山林など) |
土地取引の際の農地法手続 農地じゃないから不要 |
農業用途以外の利用 ダメ |
元々農業以外の用途に使えない土地なので要件が厳しく、どこでも認められるわけではありません。
農用地区域の突端部分や角でなければ認められる可能性は低いです。
周辺の環境含め農業利用が全く見込めないと判断された場合など、農用地区域の内側でも除外が認められることはあります。
近江八幡市
市町村によって微妙に違うかもしれませんがだいたいこんな感じです。
明らかに厳しいですね。全部YESでも最後が「除外できる」じゃなくて「除外の可能性あり」ですもん。
●除外面積は必要最低限
土地の全体を必要としないのであれば利用する部分のみで除外申請をします。
1000㎡の土地に200㎡の敷地が必要な住宅を建てるのであれば、1000㎡のうちの200㎡だけ除外してね。ということになります。
●用途
一部除外は農家住宅、一般住宅、墓、農業施設、公共用施設などに限定されています。
除外後は申請した計画通りに土地利用をすることになりますので、除外すれば好きに使えるようになるわけではありません。
●居住要件
手続時の利用者がその自治体に何年間居住していないといけないなどといった要件が定められていることもあります。
●その他
農業振興地域の集団性や周辺の農地に影響がないこと、他に代替地が無いことなど。
市町村によって結構違います。農振除外希望地が必要書類多いとこだった場合は運の悪さに涙してください。
南城市 |
農用地区域変更願 |
変更地の登記簿謄本 |
変更地の公図 |
変更値付近を示す見取図 |
資産証明書 |
土地選定理由書 |
事業計画書又は施設配置図 |
その他 |
南風原町 |
農用地区域除外申出書 |
土地全部事項証明書 |
公図 |
案内図 |
固定資産所有証明書 |
土地利用状況 |
土地利用計画図 |
農用地区域からの除外要件 |
誓約書 |
その他必要と認めた書類 |
西原町 |
農用地利用計画変更申出書 |
変更申出地の登記簿謄本 |
変更申出地の公図の写し |
変更申出地付近の見取図 |
資産証明書 |
資金計画書 |
事業計画書 |
変更申出地付近の写真 |
土地利用同意書 |
隣接地主の同意書 |
変更申出地の自治会長の同意書 |
住民票抄本 |
戸籍謄本 |
その他の書類 |
分かりにくいんですが「公図」と「変更申出地の公図の写し」は同じものです。
「公図の写し」だと普通は、写し?コピーってこと?となりますが、法務局でもらえるのが「公図の写し」なので、公図の写し=原本です。ややこし・・・
あと「登記簿謄本」と「土地全部事項証明書」も同じものです。
行政手続きの必要書類は同じ書類なのに表記が統一されてないことは普通なので慣れないと意味ぷーです。
図面については市町村によって求められるレベルが違うことがあります。
除外後に提出した図面と異なる計画で開発するとなると変更などの手続が必要になるかもしれないので、特に土地の一部を除外したい場合は除外の面積や位置が適正か、建築士・行政書士・担当部署に事前に相談してください。
できた計画図面を元に他に開発関係などでどんな手続が必要になりそうで何か問題が出そうか、その手続のためにどのくらいの費用や時間がかかりそうかなど確認しておくといいと思います。
手続の受付は時期を限定して行われているところが多い(年に2回など)ので申請時期や、そもそも受け付けてくれるのかなど事前調査が必須です。
受付後は市町村が審議したあと、県と協議を行います。可否が出るのに半年~1年以上かかったこともあります。
認められなかったときは時間と費用が無駄になることを覚悟の上、手続を行うことになります。
また、農振除外ができてもすぐに工事や土地利用ができないこともあります。
農振除外した土地が農地であれば農地転用の手続を、墓を建てるのであれば墓地等経営許可申請を、その他開発関係の手続も必要かもしれません。他の手続でさらに時間と費用がかかるかもしれません。
農振農用地となると、基本的に周りは農地なので生活環境としてはよろしくありません。
例えば、上下水道が整備されてないことが多いです。
自治体が1軒の住宅のために税金を使って整備してくれるということは考えにくいですよね。
上水道は自己負担で近くの上水道から引っ張ることになりそうです。
下水道は浄化槽になるんじゃないでしょうか。
他にも、虫などの生物との共生、街灯がない、工事のときに地盤の問題なんかも出てくるかもしれません。
諸々の手続についての費用や労力、かかる時間、その他の問題への対応、建築後の生活環境なども総合的に考えて検討することをオヌヌメします。
ちな自分が依頼を受けた農振除外手続、依頼者にダメ元でいいのか説明したうえで出すのがほとんどですが、認められなかったことの方が多いです。
①面談
お話をうかがって手続の内容などについて説明します。
土地の登記(全部事項証明書)や公図(地図証明書)など関係する書類を持っていればお持ちください。
②調査
調査費を頂いてから土地の視察や関係各所への確認を行います。
③調査結果報告・見積提示
調査結果や見積などについて説明します。
報酬の着手金を頂いてから書類作成に進みます。
④書類作成
⑤申請
受付は基本的に年に2回で、市町村によって受付期間が違います。タイミング次第では半年後などに申請になります。
残りの報酬と諸費用などを頂きます。
⑥結果(申請から半年~1年以上)
除外が認められた場合は、他に必要な手続きについて再度委任を頂ければ改めて調査・確認後、手続を行います。
⑦その他の手続
土地の一部を除外したなら分筆をした後、住宅建築なら農地転用や開発関係の手続が必要になると思います。
⑧工事開始
全ての手続が完了すれば工事開始できます。