農地の売買・貸借・贈与などや、自己所有の農地であっても農地転用(建物を建てる、資材置場にするなど農業以外の用途で使う)をするには、原則、自治体の農業委員会で農地法許可を受けるなどの手続が必要です。
農地法の手続を経ていない契約は無効で、手続をせずに転用すると違反転用となります。
勝手に転用して原状回復(農地へ戻す)を求められた事例も聞きますし、罰金や懲役の罰則も定められています。
答えは農地法1条に
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第一条 この法律は、国内の農業生産の基盤である農地が現在及び将来における国民のための限られた資源であり、かつ、地域における貴重な資源であることにかんがみ、耕作者自らによる農地の所有が果たしてきている重要な役割も踏まえつつ、農地を農地以外のものにすることを規制するとともに、農地を効率的に利用する耕作者による地域との調和に配慮した農地についての権利の取得を促進し、及び農地の利用関係を調整し、並びに農地の農業上の利用を確保するための措置を講ずることにより、耕作者の地位の安定と国内の農業生産の増大を図り、もつて国民に対する食料の安定供給の確保に資することを目的とする。
農林水産省
日本の食料自給率(カロリーベース)は38%で先進国の中で最低水準です。
食料自給率が低いということは輸入に頼ることが多いということとなり、相手国の内情、国際情勢、輸送コストなどの影響を受けてしまいます。近年ではコロナ禍、ロシアの侵攻、燃料費高騰などで分かりやすく影響が出てますね。
食料自給率が高ければ食料供給リスクを低減させることができます。
そのために国は、今だけでなく将来の国民のことも考えて農地法で規制をかけ、農地を大事に大事に守っています。
農地は所有者が適切に管理しないといけない
農林水産省
「農地は、現在及び将来における国民のための限られた資源であり、かつ、地域における貴重な資源であることに鑑み、これを優良な状態で確保し、最大限に利用されるようにしていくことが重要である。
このため、農地について権利を有する全ての者を対象として、農地の農業上の適正かつ効率的な利用を確保する責務があることが明確にされているところである。
特に、農地について所有権を有する者は、農地の農業上の適正かつ効率的な利用を確保することについて第一義的責任を有することを深く認識し、自ら農地を耕作の事業に供するとともに、自らその責務を果たすことができない場合においては、所有権以外の権原に基づき農地が耕作の事業に供されることを確保することにより、農地の農業上の適正かつ効率的な利用を確保するようにしなければならない。」
なんで農地のやりとりが厳しく制限されてるか分かりますね。
農地は大事だからちゃんと使ってな。自分で使えないなら農業する人に貸すとかして、ほったらかしにしないようにしてな。
ってことです。
とは言っても勝手に貸すことはできず、手続がいります。
貸すだけでも手続がいる理由の1つは、農地の管理者を把握するためです。
例えば、耕作放棄地になっていて周辺の農地に迷惑がかかっている場合は管理者に指導するなり事情を聞くなりできますが、誰が管理しているのか分からないと対処ができません。
また、農地を相続する場合は農業委員会での相続する前の手続はいりませんが、農業委員会は相続で所有者が変わっても把握することができないので、相続後の農業委員会への届出義務が定められてます。
農地規制が厳しかったら経済が発展しない
と言う人がよくいます。もっともな意見です。農地規制がキツイと経済的な発展はかなり厳しいです。
ですが、農地転用したい人や事業者は山ほどいます。
ゆる~い審査で転用を認めると良い農地は一瞬で無くなってしまいます。
広くて平坦な開発しやすいとこは農業もしやすいとこです。
そういうとこを開発されまくってしまうと、残るのは山間地などで、土地が狭く傾斜もあり効率的な農業ができません。
また、使ってない農地なら開発していいじゃないかという意見もあります。
農地法が使ってない農地にも規制かけてるのは、食料安全保障にも関連するからです。食料危機が起きたときには農地として利用できるようにしてます。
農林水産省
「当該事態は輸入の途絶が長期に渡るような状況と考えられることから、国内で最大限効率的な生産を行い、国民が必要とする熱量を確保することが重要である。」
「生産の転換が必要となるような事態においては、必要に応じて、現に食料生産が行われていない土地を活用することも検討が必要となる。」
農地法は大事
農地法的には、農地を守るのはみんなの食生活のためだから、ある程度は我慢してくれぇ。ということです。
一応、農地関係の手続で緩和されたこともありますが、
特に自分の土地なのに自由に使えない農地所有者はマジで気の毒だと思いますし、農地手続ができないことによる問題、トラブルも数多く発生しています。
それでも農地手続が必要なのは「現在及び将来における国民のための限られた資源」を守るため。ということを理解したうえで農地手続の検討をお願いします。