農地手続で関係が深い士業が土地家屋調査士と司法書士。どちらも法務局での不動産登記の手続を扱う仕事です。
農地手続は案件によっては行政書士だけで完結せず、土地家屋調査士や司法書士、ときには両方の手続も経て完結となるものがあります。代表的なのは所有者の名義変更をともなう農地転用です。
それぞれどんなことができて、何を相談するのか紹介します。
土地家屋調査士への確認
土地家屋調査士には主に3つの仕事を依頼します。
地目変更
「畑」→住宅なら「宅地」、資材置き場なら「雑種地」など。
分筆
1つの土地を2つ以上に分けること。所有者を分けたいとき、土地の一部を転用するときなど。
測量
土地の面積を測ります。登記に記載されてる地積が実際の面積と違うことはよくあります。
例えばこんな確認
- 法務局でも地目変更が認められそうか?
地目の変更は法務局での手続になります。
農業委員会に農地ではないと確認してもらうと現況証明や非農地証明が発行されるので、それを添付して土地家屋調査士が法務局で地目変更の手続をするんですが、農業委員会が農地ではないと認めても法務局も農地ではないとすんなり認めるとは限りません。
微妙だなと思うときは念の為に相談します。
- 分筆面積・分筆箇所
農地の一部転用許可申請が認められた後に分筆するという場合、申請面積と分筆後の面積が違うと農地一部転用許可申請のやり直しになったりするので、面積に違いが出ないように分筆できそうかを相談します。
- 分筆箇所
地目は1つの土地に1つしか設定できません。
分筆希望の土地に別々の用途の部分がある場合(畑と道など)は、その部分も別途分筆しないといけないか相談します。
司法書士への確認
司法書士に依頼するのは主に名義変更ですが、登記の内容がよく分からんことになってたりすることがあるのでいろいろ相談します。
名義変更
売買や贈与で土地の所有者を変更する手続です。
例えばこんな確認
- 仮登記
たまに登記に仮登記ってのがついてる農地があって、登記の中に所有者と別に権利者っていうのが登場してます。初めて見たときは「権利者?何者なんだってばよ?」となりました。
これは権利者が農地法の手続したら所有権が権利者に移りますよっていう予約みたいなもんです。なので、農地法の手続をしないと権利者は所有者にはなれません。農地の所有権は所有者にあります。
仮登記ついてるけどどうしましょうかねぇって相談します。
- 抵当権
たまに登記に抵当権ってのがついてる農地があって、登記の中に抵当権者っていうのが登場してます。初めて見たときは「あっ抵当権だ!行政書士試験の民法で見た!」となりました。
抵当権はアレです、金貸す代わりに返せなくなったらその土地売るからってやつです。銀行で住宅ローン組むときにもつけますね。
先に抵当権抹消するってなったりしたら相談します。
- 通行地役権
所有権なくても他人の土地を通れる権利です。この権利を土地の登記につけると、所有者が変わっても通行する権利は維持されます。
つけることを検討するってなったら相談します。
- 相続
未相続だと農地手続に相続人の同意などが必要で、相続手続と同じような書類を集めることになるため、先に相続手続をすることを勧めます。
相続手続からするってことになったら対応お願いできるか相談します。
協力作業
単純な農地転用だと行政書士でとりあえず農地転用手続きして、あとはよろしくお願いします。でいいんですが、ややこしい案件だと3士業で集まって打合せをすることもあります。
行政書士は最初の手続を担当するので、行政書士自身の業務だけでなく土地家屋調査士や司法書士の手続も含めてうまくいきそうかを確認し、全体の流れを把握し、段取り決めて、依頼者や関係業者など含めたいろいろな調整をする役割になります(コミュ力をくれ!)
例えば、農地一部転用許可申請の売買だと、
行政書士
- 農地法許可申請
- 進捗状況報告書
- 工事完了報告書
- 同一証明願
- 現況証明願
司法書士
- 相続手続
- 所有権移転
土地家屋調査士
- 測量
- 分筆
- 地目変更
これらの手続や作業の段取りや順番を行政書士が工程管理っていうんですかね?しながら進めていきます。
担当の農地手続で失敗したり、確認不足で土地家屋調査士や司法書士の手続に支障が出たりするとヤバいので責任重大です。