相談者「親族の農地を農地のままで買いたいんですけど」
自分「分かりました。要件クリアできるか調査しますね」
相談者「農業従事者証がいるんですよね?」
自分「???無くても大丈夫ですよ」
こんなやり取りがよくあります。
なぜ「農業従事者じゃないと農地が買えない」と思っている人が多いのか?
その謎を探るべく我々はアマゾンの奥地へと向かった。
農地法関係資料から「農業従事者」が出てくる部分を抽出
まず「農業従事者」って農地法のどっかに出てくるか?を調べます。
農林水産省
農地法三段表
農地法施行規則33条
・農業従事者の就業機会の増大に寄与する施設
・農業従事者の良好な生活環境を確保するための施設
※市街化調整区域内の農地
農地法関係事務にかかる処理基準について
◯施行規則33条の説明
農地法の運用について
◯施行規則33条の説明
農地法関係事務処理要領の制定について
なし
沖縄県
農地法関係事務処理の手引き
◯施行規則33条の説明
◯転用目的が農家住宅の場合は農業従事者証明等(甲種農地の場合)
※甲種農地は市街化調整区域内にある特に良好な営農条件を備えている農地
お分かりでしょうか。全部「市街化調整区域」の建築物(施設・住宅)の話ですね。
市街化調整区域ってのは都市計画法で定められてる区域。
農地法じゃないんです。都市計画法が首突っ込んできてるんです(逆かもしれない)
農業従事者証見っけた
都市計画法のとこで「農林漁業従事者」ってのを見っけました。これが「農業従事者」のことかも?
沖縄県
「市街化調整区域、区域区分が定められていない都市計画区域、準都市計画区域又は都市計画区域及び準都市計画区域外の区域内で農林漁業に従事する者が、業務又は居住の用に供するために行う開発行為は許可を要しません。」
のあとに農林漁業従事者の判断基準が記載されてます。
農林漁業従事者と証明できれば、本来開発許可いるとこに家建てるときに開発許可いらないよーという、都市計画法の農家住宅とかの要件をみるためのものなんですね。
中城村で聞いてみたら農林漁業従事者証明願って手続があると教えてもらいました。
これを証明するのは農業委員会じゃなくて都市建設課?とのことでした。
だから農業委員会では聞かないんですね。
農地法3条許可申請添付書類一覧には農業従事者証はない
農地を農地のまま売買・貸借・贈与などするときは農地法3条許可申請や利用権設定を行います。
利用権設定は自治体によっては認定農業者などに限定されていることもありますが、農地法3条許可申請は、これからしっかり農業をしていくということであれば未経験や耕作している農地がなくても申請できます。
上記の資料にも、3条許可申請(農地を農地のまま利用)のとこに「農業従事者」という文言は出てきません。
念のため、農業委員会とは別で農地法の相談ができる沖縄県農業会議に問い合わせ。
やっぱり(沖縄では?)農地法3条許可申請で添付書類になることはなさそう。
耕作証明
3条許可申請する農地が住所地と違う自治体にあるときなどに必要になります。
全部効率利用要件に関わる書類で、異なる自治体に経営農地がある場合、農業委員会同士で経営農地全てを農地として利用してるか確認をします。
農業従事者証っぽいふいんき(なぜか変換できる)を醸し出してますが、名称は違います。
買受適格証明
農地の競売に参加するときには買受適格証明願出っていう、3条許可申請と同じような申請書類を提出して、農地を取得する要件を満たしてるって証明してもらう手続があります。
南城市
これのこと農業従事者証って言ってる人もいるのかもしれません。
二番目の地目等が宅地のとこも買受適格証明欄が要になってますが、以前は家建ってたけど今はなくて、現況が畑なのかもしれません。
現況が畑なら農地扱いで農地法の規制を受けます。
なんで農業従事者証がないといけないと言われてるのか
たぶん、「市街化調整区域でも農家住宅なら開発許可がいらない」ってのが大きく関係するんじゃないかと思います。
市街化調整区域では農家住宅じゃなかったら開発許可が必要
↓
開発許可は要件厳しい
↓
申請書類も難しいし金かかる
↓
(市街化調整区域で)農地に家を建てるには(開発許可がいらなくなる)農業従事者証が必要
って感じなのでは?(名推理)
農地を取得するのに農業従事者証は必須ではありません
市街化調整区域の農地だと必要になる場合があります。ってことが分かりました。
市街化区域で住宅を建てる場合や、通常の農地法3条許可申請で農業をするために農地を買う・借りる・もらうなどは、調べた限りでは農業従事者証はいらなそうです。
ちなみに、農地法3条許可申請のときは「農業従事者証」というものや似たような証明を受けているとしても、経営農地の中にほったらかしの農地があったり、違反転用(農業に関係ない資材置場にしているなど農地以外として利用)している農地があって、全部効率利用要件などがクリアできてなければ許可はおりません。
なので、農業従事者であるという資格や認定や証明があるだけでオッケーではないですし、なくても一律にダメということではないです。
農地のやりとりや農地転用を検討するときは農業従事者かどうかは気にせず、とりあえず農業委員会や行政書士、住宅を建てるのであれば建築士に相談してみましょう。