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農業委員会総会傍聴のすゝめ

選ばれし農業委員たちが集い、農地法手続の審査が行われる場、農業委員会総会。

このベールに包まれた会議ではいったい何が話し合われているのか?

 

その謎を解明すべく、我々取材班は潜入取材を試みた。

傍聴の申込

農業委員会事務局で次回の農業委員会総会の傍聴をしたい旨伝えたところ、対応した職員は驚いたような様子をみせた。傍聴されたことがないそうだ。事務局内で話し合いが行われている。

 

傍聴の理由を聞かれたので勉強のためと答えたところ、傍聴できることになった。

 

受付用の傍聴人名簿を準備しておくので、開会前に農業委員会事務局に寄って受付けをするようにと説明を受け、その場をあとにした。

入室

当日、農業委員会事務局に行くと、傍聴人名簿は会議室にあるということでそのまま会議室へ案内された。

 

会議室に入ると、農業委員たちは既にほとんど来ているようで、雑談したり備え付けの茶菓子を食べたりで和やかな雰囲気だ。取材班が会議室に入っても特にびっくりする様子はない。

 

傍聴席は部屋の後ろの方に独立して机と椅子が用意してもらえている。

傍聴人名簿に住所や氏名を記入し、静かに開会を待つ。

開会宣言

議長「これより第334回 農業委員会総会を開会します」

 

いよいよ総会が始まった。

 

議長の横には農業委員会事務局長、農地転用担当者、3条担当者が座っている。いつも対応してもらっている担当者たちだが、会議の場での姿は新鮮だ。

 

すぐに議長から今日は傍聴人がいる旨の発言があり、どうしていいのか分からないので、とりあえずペコってした。農業委員たちの反応はない。

 

その後はお知らせや農業委員の1人が遅れるなどの連絡事項があり、いよいよ本題に入っていく。

審議開始

まず非農地証明願、現況証明願、3条許可申請の審議が行われた。

事前に農業委員たちに配られてある資料にある譲渡人・譲受人・地域・地目・地積・契約形態などの情報を担当者がまとめて読み上げる。

 

途中、遅れると報告のあった農業委員が入室。遅れた理由は聞き取れなかった。

 

担当者は補足説明を入れながら一通り読み上げたあと、農業委員たちに意見を求めた。

 

農業委員の手が挙がる。

営農計画書に記載されている作物の中に珍しい作物があるようで、どういうものかという質問だ。

他の農業委員が作物の特徴や人気が出てきているなどと説明を行う。

 

やはり営農作物については関心が高いようで、あそこでこれは難しいんじゃないかとか、この農家はこういうのをたくさん作っているとか、自分はこういう風に作っているなどの話が出る。

 

作物について以外にも、売買代金についてや、この譲受人は誰々の親族で~という情報が飛び交う。

 

審議との関連が薄いやりとりをするときや、事務局がすぐに回答できないときなどは、農業委員や事務局の求めを受けて議長が「休憩」を宣言するようだ。

休むというよりは、審議にあまり関係のない会話や時間は議事録に載せないということだろうか?審議に戻る際は議長が「再開します」と宣言している。

 

基本的に農業委員と事務局がバチバチやりあうという感じではないが、ソーラーパネルの下で農業を行う営農型太陽光発電施設の案件についてだけは複数の農業委員から懸念が示され、鋭い質問が飛んだ。

よく太陽光発電施設は問題が多いと聞く。農業委員たちも警戒している様子だ。

 

最後に議長がすべて許可を出していいかの決を取り「異議なし」の声を受けて3条許可申請までの審議は終了した。

農地転用審議

続いて農地転用手続についての審議に入った。

農業委員の1人が退室を促されて会議室から出ていった。親族が申請人になっている案件がある農業委員は、その案件の審議の際は退室する運用になっているようだ。まずその案件のみ審議したあと、退室していた農業委員が再び入室した。

 

続いて、3条などのときと同じように、担当者が案件の情報を読み上げた。いくつか複雑な案件もあり、農業委員たちに諮る。

 

ときどき、事務局が質問に答えたあとに補足説明を加える農業委員がいる。めっちゃすごい。農地法だけじゃなく、都市計画法など関連法令にも話が及ぶ。行政書士の中でもこれだけの知識がある人はほとんどいないだろう。この人がご意見番的存在なのだろうか。事務局からも一目置かれているように見える。

 

最終的には、条件付きで許可するという案件が1つあったが、すべて許可を出すということで農地転用手続の審議も完了した。

傍聴終了

転用手続のあとは利用権設定についての審議があった。これについてはサーッと終わり、議案が農業委員会内の連絡事項にうつる。

 

終わるまで待っとくもんだと思って聞いていたところ、事務局の方がきて、もう退席してもいいということだったので静かに退室した。総会開始から1時間半ほど経っていた。

 

外は朝からの雪で地面が白く染まり、セミがけたたましく鳴いている。

 

こうして潜入取材は成功を収め、地球滅亡の危機は回避されたのであった。

to be continued...

 

 

 

この物語はヘックションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。

傍聴の仕方おさらい

傍聴については、自治体のHPに例規集ってのがあって、その中の「農業委員会会議規則」みたいのに「総会は公開で傍聴できる」って定められてると思います。

 

まずは総会の日時を確認し、総会前日までに傍聴したいと伝えてください。

 

傍聴人の席の用意や傍聴人名簿の準備、会議室の確保などがあるので直前に申込まれると農業委員会事務局が困ってしまうことがあります。

 

農業委員会によっては警戒されることがあるので、大丈夫ですよ~怖くないですよ~黙って聞いてるだけですよ~と一生懸命アピールしましょう。

 

行政書士が傍聴するのは申請してる案件がないときがいいと思います。圧力かけにきたとか思われる可能性もあるので。

 

傍聴のメリットとして、

  • 許可・不許可の目安が分かる
  • レアな案件の話が聞けるかも
  • 農業委員会事務局と農業委員たちの関係性が分かる
  • 農業委員たちが何を気にするかが分かる

といったことがあります。

 

3年ほど全然傍聴行けてませんが、コロナ禍前は都合が合えば傍聴しに行ってて、農業委員の方に用意されてる茶菓子を勧めてもらえるようになりました。そのうち勧められなくても勝手に食べてたmgmg

 

みなさんも快適な傍聴ライフを。